白い夢4へ
白い夢5
ユタカの体は重力に逆らわないように自然と動き出し、自由落下をし始めた。
そこは地上から離れた遥か上空、飛ぶことを諦め土を歩む事を決めた今の人類にとってそこは何もできない領域。
そして人間の性質上、個人差はあるが大抵は骨の量が一番多く、脳がある頭が一番重たい。
ユタカは高校生の平均体重の少し下かほぼ同じくらいの健康的なごく普通のどこにでもいそうな少年である。
もちろん、何かおかしな事が起こらないかぎり、頭を下にして落ちていく………
周りにつかまる物なんて勿論ない、どこかのアニメのように手を羽ばたかせたって、浮力が得られるわけじゃない。
どう足掻いたって、この今の状況を変える事はユタカにはできない、ただ落ちていくだけ。
自分に超能力があったなら、自分がもしも鳥だったならと考えるだけ、自分の無力さがあからさまになる。
人はこのような場面に陥るといままでの人生が走馬灯のように思い出されてくるというが、ユタカにはソレは起こらなかった。
目を閉じてみても、何も見えやしない、ただ黒闇が目の前を支配するだけ。
ユタカは自分の人生ってこんなものだったのかと情けなく思う。
「っていうか俺ってもう死んでるんじゃないのか。。どうなれっていうんだよ…… 」
地面に到着するまであっという間に思えたが、とても長く感じる。
風を切る音… 顔や手にあたる風圧の感触… また死ぬのかという恐怖に怯える心臓の音…
今までの自分でないくらいに冴えている。 感じたくもないのに。
しかし、感じる時間は長くても終わりは必ず訪れる。目の前を地面が覆っていく。
「わぁぁぁ、止まれー! 」ユタカは叫んだ。
……何も感じない。何かがおかしい。ユタカはぎゅっと閉じたまぶたを開いた。
目の前には確かに地面がある。だが、衝突していない自分がいる。
ユタカは自分が宙に浮いたまま静止していることに気づく。
地面に手をついて、体勢を直し、そこに立った。そして思い出す、あの部屋の出来事を。
ユタカはあの時自分が部屋の壁をすり抜けたことと今の宙に浮いていた事を考えて自分が幽霊であると確信した。
いや、実際のところよくわからないのが正しいのかもしれない。しかし今のユタカには何か事実を結び付けたがっていた。
「俺って、やっぱり死んで幽霊にでもなっちまったのかな。」
ユタカはそっとつぶやき、ため息をつく。そしてハッと気づくようにして辺りを見渡す。
「あれ…ここってやっぱり札幌じゃないか! 」
しかし、あきらかに違う。辺りは真っ暗闇につつまれていて、建物の外見がうっすらと見える程度。
そして何より、人の姿が見えない。どこを探しても見当たらない。まるで自分が地図の中に入った様に。
普通ならここは昼と夜なんて概念がないくらい、いつでも明るいし、人なんてうじゃうじゃしているのが当たり前。
ちょっと歩くものならキャッチセールスが話しかけてきたり、外人にカタコトでよくわからない店を勧められる。
目的の無い者がぶらぶら徘徊したり、宛てもないまま誰かを待ち続けていたり、はっきりいってユタカにはどうでもいい町だ。
だが、それがどうだろう。人の声ならまだしも、風の音さえ聞こえてこない。一切の雑音がなく、生気が感じられない。
とりあえず、ただ立ち止まっていてもどうにもならないので、ユタカは歩き出した。
歩いている途中でも辺りを見渡しながら何か動きがないか探したが、ずっと静かなままだった。
そのまま歩いていると、ふとあることに気がついた。見えてくるはずのものが見えてこない。
「んーと、たしかこっちに駅があったはずだよな…」
ユタカは少し早歩きになった。そして“あるはず”の場所に辿り着いたときユタカは唖然とした。
たしかに、駅はそこに存在していた。原型は保ってはいなく、焼け崩れた状態で。
その駅は、都市の中心でもあり、とても大きなものだった。さらには、いろいろな店が併設されており、周りはすべて人ばかりだった。
本屋、飲食店、ファッション、家電製品などなんでも揃っている。ユタカも何度も来た事がある。
友達と街で遊ぶといったら、ここの駅で待ち合わせがほとんどだった。
そんな、そこにあるのが当たり前な駅が、ほぼ全壊状態。プラスチックが溶けたような焦げた匂いが漂う。
風が吹き、塵が舞う。ユタカは瓦礫の中に落ちていたボロボロのうさぎのぬいぐるみを徐に手にとった。
「一体、ここで何が起きたんだろう… 」
ユタカは遥か遠くを眺める。視界の殆どは全壊した駅が映っている。
持っているうさぎのぬいぐるみを地面に置こうとしたとき、後方でガタッと音がした。
人かと思いすぐさまユタカは振り返ってみるが、そこには誰もいなかった。
ユタカはまた歩き出した。一体この街はどうなってしまったのか。それを知るためにも高い場所へ上って確かめるしかない。
その時、ユタカが思い描いた高い建物はテレビ塔だった。知らずと足が速くなる。
テレビ塔は無事だった。いや崩れていないのが当たり前なのだが、ユタカにはそう思った。
中は真っ暗でエレベーターは使えない。外から上るしかない。立ち入り禁止のロープをくぐり階段を上り始めた。
カンカンカンカン……
階段を上る音が暗闇に響く。
「はぁ。結構長いんだな、階段って」
ぐるぐると塔を螺旋状に続いている階段、そろそろユタカが疲れかけてきたときだった。
またも後方から、今度はカンカンカン……と誰かが上ってくる音。明らかに誰か…いる。
ユタカは怖くなって全力で階段を上った。そして視界が開け、階段でいける最上階へとついた。
「しまった!! 」
そう気づいたときには遅かった。自分はもうこれ以上は進めない。行き止まり状態だ。進める道は今上ってきた階段のみ。
しかし、そこを誰かが上ってくる。単調な足取りで。速度を変えることなく。ゆっくりと。
ユタカは手すりを背に、その人物を見つめる。
―――黒い。闇に溶け込んでいるような真っ黒なコート。顔はすっぽりとフードをかぶっている。フードの奥は何も見えない…
そいつは、階段を上り終えて、ゆっくりとユタカに近づいていく。歩いているようには見えない。体を直立したままスライドしているようだ。
距離が段々と近づいてくる。ユタカにはうごくことができなかった。というより動けなかった。金縛り状態に陥っていたのだ。
1メートルくらいに近づいたとき、そいつは止まった。顔を見上げる。それでも顔は見えない。
そいつの口元がにやりと笑った。なにをする気なんだ! ……声も出ない。力を込めてもがくが体が言うことをきかない。
コートがもぞもぞと動き、左手がゆっくりと前に差し出された。手には何かが握られている。
!? ――嘘だろ…自分の腕もゆっくりと上がる。コントロールがきかない! そいつに制御されてるのかわからない。
ユタカの腕は手のひらを上にして開いた状態で静止した。その手のひらの上にそいつの手がかぶさる。
握られていたものは、"指輪"だった。ユタカの手のひらにコロンと転がる。そしてぐぐぐとそれをつつみ込む。
それと同時に、そいつの右手がユタカの額に近づく。ゆっくりと。
今度こそやばい! ユタカは何かされると直感的に分かった。
目の前は真っ暗になる………
o┤*´Д`*├o アァー今回はとても長くなってしまいましたー。。。
自分の国語力のなさに呆れます。。。もぅやになっちゃうよ。こんな文でも分かってくれるといいなぁ。。